
1.長引く腰痛では、生活でできることを目標にする

痛みを和らげることと、歩く・家事をする・仕事を続けることを、あわせて目標にします。長く続く腰痛では、運動や生活の工夫、必要に応じた心理的な支援など、状態に合う方法を組み合わせて考えます。[1]
WHOのガイドラインは、特定の基礎疾患などによらず、3か月を超えて続く「慢性一次性腰痛」を対象にしています。身体だけでなく、心理面や生活環境も含めて、その人に合うケアを選ぶ考え方です。[1] まず必要な病気の確認を受け、医師からの治療や動作の指示があれば、それを踏まえて進めます。[2]

取り戻したい動作を、一つ決める
例えば、近所まで歩く、朝の支度をする、短い時間なら家事を続けられるようになるなど、今の生活に必要な目標を選びます。最初から長い運動時間や大きな負荷を設定せず、現実的な小さな段階に分けて取り組みます。[3]
2.運動は、続けられる量と方法から始める

運動の種類と量は、症状、体力、これまでの運動経験に合わせます。[1][2] 歩行なら短い距離、体操なら少ない回数など、まず取り組める範囲を見つけましょう。痛みを我慢して決めた回数を終えることが目的ではありません。

始める前と、痛みが増したとき
第5章の受診を優先したい症状がある方や、医師から安静・動作制限を指示されている方は、自己判断で運動を始めないでください。運動中に腰や脚の痛みが増す場合は中止し、医師などへ相談します。[4]
運動を増やした後につらさが強くなる場合は、量や内容を見直します。以前できていた量へ戻すなど、進め方を調整する方法があります。[5] いつもと違う強い痛みや新しいしびれは、単なる運動後の反応として扱わないでください。
3.認知行動療法は、どのような支援?

認知行動療法(CBT)は、痛みが生活にどう影響しているかを話し合い、考え方・気持ち・行動のつながりを扱う支援です。専門職と本人が目標を決め、日常で試す対処法を考え、その後の様子を確かめていきます。[3]
痛みへの不安が強く、必要な動作を避けてしまう場合や、痛みのために気分や生活へ影響が出ている場合も、相談できます。本人の困りごとや希望を踏まえて、適した支援かどうかを確認します。[3]
WHOは、慢性一次性腰痛に対してCBTをケアの一部として検討できる選択肢に挙げています。ただし、この推奨を支える根拠の確実性は「非常に低い」と評価されており、効果を一律に保証するものではありません。[6]
専門的なCBTを希望する場合は、主治医に相談し、対応できる医療機関や専門職への紹介先を確認しましょう。
4.活動と休息を配分し、少しずつ広げる

調子のよい日に、一度に詰め込まない
楽な日にまとめて動き、その後につらさが増して長く休む。この繰り返しがある方は、活動を小分けにする方法があります。家事を一度に終わらせず区切る、歩く時間の途中に休憩を入れるなど、活動と休息を配分します。[5]

続けられる量が分かったら、小さな段階で増やしていきます。うまくいかない日は、計画を見直す材料にします。痛みの強さだけでなく、歩く・立つなどの動作がどう変わったかも、次の目標を決めるときに確認しましょう。[3][5]
治療とセルフケアの役割を確認する
運動や施術を受ける場合も、今使っている薬を自己判断で中止・変更しないでください。薬の効き方や副作用が気になるときは、医師・薬剤師へ確認します。[7] それぞれの担当者に受けている治療を伝え、無理なく両立できる進め方を選びましょう。
5.長年の腰痛でも、受診を優先したい変化
尿が出にくい・尿便が漏れる、股の間や肛門まわりの感覚低下、両脚の痛み・しびれ・脱力が新しく出た場合は、救急受診を優先してください。胸痛を伴う腰痛や、大きな事故後の腰痛も同様です。[4]
発熱や悪寒、全身の具合の悪さ、突然の非常に強い痛み、急速な悪化は、当日中に医療機関へ相談してください。[4] 片脚のしびれ・力の入りにくさ、安静でも楽にならない痛み、次第に悪化する痛みも、早めに整形外科で確認を受けましょう。[2]
長く腰痛があっても、新しい症状を「いつもの痛み」と決めつけないでください。セルフケアやLINEの返信を待たず、受診を優先します。
6.当院での施術・運動と日常の工夫

からだ鍼灸整骨院では、痛みの経過、生活で困る動作、医療機関での診療状況を伺い、腰や股関節の動きと筋肉の状態を確認します。施術内容を説明したうえで、トリガーポイント鍼や筋膜リリースなどから状態に合う方法を選びます。
施術後は同じ動作で変化を確かめ、日常に取り入れる運動や休憩の工夫をお伝えします。医療機関での確認や専門的な支援が必要な場合は、その相談を優先します。鍼が苦手な方は、鍼を使わない方法もご相談ください。
身体に力が入り、息を詰めてしまうときに試せる方法は、楽な姿勢で行う穏やかな呼吸の手順で紹介しています。リラックスを目的とする方法で、腰痛への効果について分かっていることと限界も説明しています。
参考資料
資料確認日:2026年10月6日。個別の診断に代わるものではありません。
- WHO「WHO releases guidelines on chronic low back pain」 — 慢性一次性腰痛の対象範囲、教育・運動・心理的支援などを状態に合わせて組み合わせる考え方。
- 日本整形外科学会「腰痛」 — 腰痛の多様な原因、診察と必要な検査、しびれ・脱力や悪化する痛みの受診。
- Cambridge University Hospitals「Psychology treatments and pain service」 — 慢性痛に対する認知行動的支援の内容と、本人の希望に合わせた目標設定。
- NHS「Back pain」 — 活動の継続、運動で悪化した場合の中止、救急・当日受診の目安。受診制度は日本向けに表現を調整。
- Dynamic Health NHS「Chronic pain」 — 活動と休息の配分、活動量を少しずつ増やす考え方。
- WHO「慢性一次性腰痛ガイドライン・概要」 — 慢性一次性腰痛に対する運動、認知行動療法、腰部装具の推奨と根拠の確実性。急性腰痛や骨折への一律適用はしない。
- PMDA「お薬または医療機器を使われている方へ」 — 医療用医薬品の自己判断での中止・用法用量の変更を避け、医師・薬剤師に確認すること。
筆者紹介

からだ鍼灸整骨院 代表 長野 圭佑
保有資格・専門分野
- 鍼灸師・柔道整復師(国家資格)
- NESTA PTI(パーソナルトレーナー)
- アクティブリリーステクニックマスタープロバイダー
- 臨床トリガーポイント
- TPI(タイトリストパフォーマンス研究所)





